旅するように学ぶ

仕事のこと、夫婦のこと、子育てのこと。日々感じたことや学びをつれづれと。

保育園から学ぶ、個性と多様性の話

先日、保育園から招待状が届いた。きっとこの時期に多くの保育園や幼稚園で開催されるであろう発表会のようなイベントのお知らせだった。

 

その招待状の中には、子どもたちが一生懸命練習していること。1年間の成長が感じられるということ。そして、もちろん本番は大切なのだけれど、がんばっている今のプロセスを大切にしたいというような先生からのメッセージが添えられていた。

 

あぁ、この保育園らしいなと思った。

 

我が家の息子は3月生まれだ。クラスの1/3くらいの子たちとは丸1年近く遅く生まれており、クラスの中で早生まれは息子ひとり。クラスの中では圧倒的に月齢が低い。

1歳クラスで今の保育園に転園した時、走り回る2歳間近な子たちの中で、息子はひとりまだ歩き始めたばかりだった。

 

親として心配をしていたことはたくさんあったのだけど、先生方はとても丁寧に息子の様子をみて、息子のペースに合わせながら接してくれていて、本当に有り難いと思っていた。

 

しかし、そういうわけではないと確信したのは入園から半年がたった頃。入園して初めての運動会で、私たち夫婦はとても驚くことになった。

 

象徴的な競技は、年長クラスの障害物競争的な競技だった。よくあるのは、やはり「よーい、ドン」で誰が一番を競うというものだと思う。

 

園庭には、なわとびや跳び箱や鉄棒などがセッティングされている。見た目はよくありそうな障害物競争だ。

 

だけど、スタートするのはひとりひとり順番だった。先生が名前を呼び、返事をしてスタートする。

そして、先生がする放送は「がんばれ!」や「さぁ誰が一番でしょうか!」ではない。「○○君は、△△に挑戦します。4月から△△ができるようになりたいとずっと練習をしてきました」というような調子で、その子のそれまでの取り組みを紹介するのだ。

 

ちゃんとひとりひとりにスポットライトが当たる発表の場が設定されているのである。

 

そして、競技が進んでいくとまた驚かされる。その子によって障害物のコースが違うのだ。縄跳びで前跳び10回をする子、二重跳びをする子、フラフープをする子、鉄棒で前回りをする子、連続逆上がりをする子と、本当にみんな違って、ひとりひとりが自分でどれに挑戦するかを選んでいた。

年長クラスのお兄さんお姉さんは、晴れた運動会の日にふさわしいとてもいい表情をしていた。

 

未就学の子どもたちは月齢によって発達の差も大きいし、そもそも子どもによって好き嫌いも、得意不得意も異なる。

 

書いてみると当たり前のようだけれど、意外と社会の中でそんな当たり前を当たり前にデザインされた場所というのはとても少ないのだ。それは大人の場合も同じなのだけれど。

 

とにかく運動会で私たち夫婦は感動した。運動会というものにこれだけ先生たちが工夫をしているということに。そして、ひとりひとりの個性を大切にしていることに。

 

そして気がついた。

先生方は、1人月齢の低いうちの息子に合わせてくれていたのではなく、クラスの中のひとりひとりに合わせて保育をしてくれているのだと。

 

個性や多様性。ダイバーシティという言葉を聞かない日はないくらいだ。なんとなくよさそうだな、大事そうだなとは思うけど、じゃあどうしたらいいの?という解は見当たらない。

 

だけど、息子の保育園の運動会を見てから、個性を大切にするってこういうことなんだろうなと思うようになった。

同時にそれを効率や生産性というものと両立するには相応の意志が必要なのだろうなとも思うようになった。ひとりひとりを大切にするということは、一律の対応では終わらない。それぞれのやりたいことを話し、それぞれのやりたいことをサポートすることになるのだ。手間も時間もかかる。

 

でも、いやだからこそ、子どもたちはあんなに晴れやかで達成感に満ち溢れた顔をしているんだろな。

 

保育園という、普段働いている組織やビジネスとは異なる文脈の場所から学ぶことが、実はたくさんある。

 

今月のイベントも、楽しみだなぁ。



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